浅草をいろどる日本語模様(もよう)<4> 何て読む? 「初夢」「初雪」「初陣」「初産」

初雪で白と赤のコントラストが美しい浅草寺の五重塔(2022年1月6日)

浅草をいろどる日本語模様<4>

何て読む? 「初夢」「初雪」「初陣」「初産」

1月は「行く」、2月は「逃げる」。3月は「去る」――新しい年が始まって4月を迎(むか)えるまで、昔から日本の企業(きぎょう)や公官庁(かんこうちょう)、学校(がっこう)では何かと気忙(きぜわ)しく足早(あしばや)に時が過ぎていきます。

1月は「行く」

2月は「逃げる」

3月は「去る」

「い」ち月(=「い」く)は、正月休みが明(あ)けたあと、あっという間(ま)に行ってしまい、月末(げつまつ)になる気がします。

1月は「往(い)ぬる」という場合もあります。「往ぬ」の完了形(かんりょうけい)で、過ぎて行ってしまったという意味です。

「に」月(=「に」げる)は、28日間しかなく、これまた逃げるように早く終わってしまいます。

「さ」ん月(=「さ」る)は、年度末の締(し)めがあり、卒業(そつぎょう)シーズンでもあり、慌(あわ)ただしい日々を重(かさ)ねていきます。「去る」は、今いる場所からいなくなるイメージです。

日本では3月が業務(ぎょうむ)や学業(がくぎょう)の締(し)めとなる年度末です。新年度となる4月が待ち遠(どお)しいという気持ちが強いのかもしれません。

早いもので1月も、もう下旬(げじゅん)です。1月は「初夢(はつゆめ)」「初詣(はつもうで)」「初荷(はつに)」「初競(はつせ)り」など、「初(はつ)」を使う場面(ばめん)がよくあります。

初夢(はつゆめ) :1月2日に見る夢

初詣(はつもうで):年明けに初(はじ)めて寺社(じしゃ)などに参拝(さんぱい)すること

初荷(はつに)  :新年の初出荷(はつしゅっか=現在は1月4日が多い)

初競り(はつせり):新年初めて市場(いちば)で行(おこな)う競り(1月5日)。「競り(せり)」は商品(しょうひん)の価格(かかく)を競(きそ)わせること

浅草寺への初詣

「初仕事(はつしごと)」という言葉もありますが、これは3つの意味があります。

  • その年の初めの仕事(仕事始め)
  • 就職(しゅうしょく)して初めてする仕事
  • 職場(しょくば)が変わって新しい所で初めてする仕事

新年に限(かぎ)らずとも、「初雪(はつゆき)」「初氷(はつごおり)」「初霜(はつしも)」「初鰹(はつがつお)」などは、その年の初めての出来事(できごと)を指(さ)します。

初雪(はつゆき) :その冬に初めて降る雪(新年初めて降る雪を言うことも)

初氷(はつごおり):その年に初めて張(は)った氷

初霜(はつしも) :その年の秋から冬にかけて初めておりる霜

初鰹(はつがつお):初夏(しょか)のころにとれる鰹(かつお)

浅草寺境内の雪景色(2022年1月6日)
仲見世通り(2022年1月6日)

同じ「初」でも「うい」と読む時があります。これも新年に限(かぎ)りません。

「初陣(ういじん)」「初産(ういざん)」「初孫(ういまご)」などです。

それぞれ、初めての出陣(しゅつじん=戦いに出ること)、出産(しゅっさん)、孫のことです。

初陣(ういじん):初めて戦いに出ること

初産(ういざん):初めての出産

初孫(ういまご):初めての孫

「うい」は旧仮名遣(きゅうかなづか)いでは「うひ」で、「うぶ」(初/産)、さらには「うむ」(生む/産む)との関連性(かんれんせい)を主張(しゅちょう)する語源説(ごげんせつ)があります。だからでしょうか、「初」を「うい」と読む時の意識(いしき)としては、生まれて初めて経験(けいけん)する、というイメージがあるようです。

ただし、古い言い方を嫌(きら)って、最近では「初孫」を「はつまご」と言う人も増えてきています。

「初産」も「はつざん」と読む場合もあり、また、医学用語(いがくようご)としては「しょざん」と読むことになっており、注意(ちゅうい)が必要(ひつよう)です。