浅草をいろどる日本語模様(もよう)<8> 4つの浅草駅――電車のドア「閉(し)まります/閉(し)めます」

浅草をいろどる日本語模様<8>
4つの浅草駅――電車のドア「閉(し)まります/閉(し)めます」
「浅草駅」と一口(ひとくち)に言っても、路線(ろせん)によって4つの駅があります。それぞれ所在地(しょざいち)も違います。
東京地下鉄(東京メトロ)銀座線(ぎんざせん)の「浅草駅」(浅草1丁目)
都営(とえい)地下鉄浅草線の「浅草駅」(駒形〈こまがた〉1丁目)
東武(とうぶ)鉄道(東武線)の「浅草駅」(花川戸〈はなかわと〉1丁目)
つくばエクスプレスの「浅草駅」(西浅草3丁目)




この中で、つくばエクスプレスの駅はやや離(はな)れた場所にあります。浅草国際学院も同じ西浅草3丁目で、徒歩(とほ)6分です。
電車に乗る際(さい)、ドアの動きに気を付けるよう駅員がアナウンスして注意(ちゅうい)をします。
よくこう言っています。
ドアが閉(し)まります。お気を付けください。
電車のドアは普通(ふつう)、自動(じどう)ドアですので、駅員が手を使わなくても動きます。ですから、「ドア」が主語(しゅご)で、術語(じゅつご)の「閉まります」は自動詞(じどうし)です。このとき、「ドアが閉まります。」というように、【が】を使(つか)います。
ところが、満員(まんいん)電車などで、もう出発時刻(しゅっぱつじこく)なのに、まだ人が乗ろうとしている場合(ばあい)、駅員はこう言います。
ドアを閉(し)めます。ドアを閉めます。次の電車をご利用(りよう)ください。
「閉めます」は他動詞(たどうし)です。「ドアを閉めます」というように、【を】を使います。
自動詞の「閉まります」は、人は関係(かんけい)なく、つまり人の意思(いし)や気持(きも)ちは考慮(こうろ)に入れず、ドアが自動で動くイメージです。
それに対して、他動詞の「閉めます」は、人がドアを操作(そうさ)するイメージです。
「(駅員である)私がこのドアを今、閉めますから、もう乗れません。」という駅員の必死(ひっし)な気持ちが、他動詞の「閉めます」には込(こ)められています。
自動詞は【が】を使い、人の気持ちは関係ない。他動詞は【を】を使い、人の気持ちがあると覚(おぼ)えておくよう、学生に指導(しどう)します。
現在、新型(しんがた)コロナウイルスの感染対策(かんせんたいさく)のため、駅員が電車の窓(まど)を少し開(あ)けます。
この「(窓を)開けます」は他動詞です。自動詞は「(窓が)開きます」です。
電車ではなくタクシーの話ですが、日本の場合、タクシーのドアは自動です。ですから、お客が降りる時、「ドアが閉まります」。しかし、海外では、お客が「ドアを閉めます」。