浅草をいろどる日本語模様(もよう)<6> 青信号は「進め」ではない!?

浅草国際学院すぐ近くの金竜小学校前交差点

浅草をいろどる日本語模様<6>

青信号は「進め」ではない!?

あるたそがれ時(どき)、浅草国際学院の前を走(はし)る言問(こととい)通りの信号機(しんごうき)が、見通(みとお)す限り青信号(あおしんごう)だったので、思わず写真に納(おさ)めました。

「たそがれ」は、周囲(しゅうい)が暗くなりかけ、人が判別(はべつ)できない時、「誰(た)そ彼(かれ)」(だれだあれは?)と聞く様子(ようす)が語源(ごげん)です。

ですから、たそがれ時は辺(あた)りが見えにくく、交通事故(こうつうじこ)が最(もっと)も起きやすい時間帯でもあります。気をつけなければなりません。

たそがれ時の言問通り。見通す限り信号は青色に

初級のクラスで「日本に来てびっくりしたこと」を聞きました。

「果物(くだもの)が高いです。」

「駅のホームで人が並(なら)びます。」

「冬、冷(ゆめ)たいものを飲みます。」

「信号を守(まも)る人が多いです。」

学生は皆、思い思いに意見(いけん)を述(の)べていきます。

信号を守るのは当たり前と言えば当たり前ですが、日本における歩行者(ほこうしゃ)の信号遵守(じゅんしゅ)の姿(すがた)に感動する留学生が多いです。

信号機の色は、国際的(こくさいてき)に決められています。

国際的に決められている信号の色は――

赤色(あかいろ red)

黄色(きいろ yellow)

緑色(みどりいろ green)

しかし、この緑色(みどりいろ)の信号、日本では青信号と呼ばれます。

昔から、日本では「青」を示(しめ)す範囲(はんい)が広く、「緑」のことを「青」と言うことが多かったのです。そのため、信号の色も、「青」と言っています。法令(ほうれい)でもそうです。

緑色のリンゴを「青リンゴ」と言ったり、緑色の野菜(やさい)を「青野菜(あおやさい)」、緑の葉っぱのことを「青葉(あおば)」と言ったりします。木にいっぱい葉っぱがあるのを見て、「青青(あおあお)としている」と言い、決して「緑緑(みどりみどり)している」とは言わないのです。

「万古長青(ばんこちょうせい)を誓(ちか)う」とは、誓いを永遠(えいえん)に違(たが)えないことを言います。常緑樹(じょうりょくしゅ)の松(まつ)を指(さ)して「長青」と表現(ひょうげん)した言葉(ことば)です。

ちなみに、赤信号は「止まれ」です。止まらなければなりません。

黄色の信号は「注意(ちゅうい)」とよく言われますが、決して「注意して進め」ではありません。むしろ、「止まれ」が原則(げんそく)です。安全(あんぜん)な停止(ていし)が可能(かのう)なら「止まれ」なのです。

そして、青信号は、「進(すす)め」ではありません。許可(きょか)です。「進んでもいい」「行ってもいい」という意味です。

青信号は「進め」ではありません。許可です。

「進んでもいい」「行ってもいい」という意味です。

歩いて、また自転車(じてんしゃ)を押(お)して横断歩道(おうだんほどう)を渡(わた)る時は、安全(あんぜん)のために、急いで歩き出さず、右を見て左を見て、もう一度右側を見ましょう(日本の自動車は左側走行なので)。危(あぶ)なくなかったら進み、もし危なかったら、進まずに止まっているのです。

特に自転車に乗っている場合は要注意(ようちゅうい)です。自転車は軽車両(けいしゃりょう)に当(あ)たるので、信号無視(むし)はもってのほかです。罰金(ばっきん)を科(か)されることもあります。