浅草をいろどる日本語模様(もよう)<15> 春うらら、桜花(おうか)の隅田川両岸に笑顔も満開

浅草をいろどる日本語模様<15>
春うらら、桜花の隅田川両岸に笑顔も満開
♪春のうららの 隅田川
のぼりくだりの 船人が
童謡・唱歌として有名な「花」(作詞・武島羽衣、作曲・滝廉太郎)の冒頭です。1900年に発表されました。
浅草は隅田川のほとりに発展した街です。
「春のうららの」というのは、天気の良い春の日で、ゆっくりと時間が流れているイメージです。川を船で行く人もゆっくりと通り過ぎていきます。
ここで、「のぼりくだり」という言葉が出てきます。「のぼり」は、上に行くということで、「くだり」は下に行くという意味です。「上」とは、川の上流に向かっていき、「下」とは川の下流、つまり海の方へ向かっています。
のぼりを漢字で書くと、「上」を書いて、ひらがなの「り」で「上り」です。くだりは、「下」を書いて、ひらがなの「り」で「下り」となります。
電車にも、この「上り下り」があります。東京駅に向かう電車は「上り」、東京駅から出発するのが「下り」電車です。
ちなみに、「上(のぼ)り」に尊敬を指す「お」を付け、後ろに人を呼ぶときの「さん」を付けて、「お上りさん」という言葉があります。これは、都会に出てきて珍しそうに色々と見物している地方の人のことを言います。4月には「お上りさん」を多く見かけます。尊敬語が付いていますが、実は失礼な言い方です。
「花」の歌詞の続きはこうです。
♪櫂(かい)のしずくも 花と散る
ながめを何に たとふべき
「櫂」は船を進ませる道具、オールです。「花と散る」は花びらのように散るということです。水しぶきの一滴一滴が、まるで花びらのようだと言っています。「しずく」には「滴」や「雫」という漢字があります。
この良い景色(けしき)を何に例えればいいのだろうか、と1番を結んでいます。
コロナ禍(か)3回目の春です。隅田川両岸は、満開の桜と満面の笑(え)みの家族連れやカップルでにぎわっています。