鉾田(ほこた)をいろどる日本語模様<5> 大洗鹿島線と旧鹿島鉄道線

大洗鹿島線と旧鹿島鉄道線

鉾田市内には6つの鉄道駅があります。鹿島臨海鉄道株式会社が運営する大洗鹿島線の「涸沼(ひぬま)駅」「鹿島旭(あさひ)駅」「徳宿(とくしゅく)駅」「新鉾田駅」「北浦湖畔(きたうらこはん)駅」、そして「大洋駅」です(水戸駅から乗車した順)。

浅草国際学院茨城校の最寄(もよ)り駅は、徳宿駅と新鉾田駅です。

なぜ「新」鉾田駅なのかというと、以前、鹿島鉄道線の「鉾田駅」があったからです。関東の駅百選にも選ばれた駅ですが、路線が2007年に廃止され、廃駅となっています。

かつての鉾田駅のホーム跡が残っています。東日本大震災時の液状化現象の影響で沈下し、一層もの寂しさを感じさせます。その横はバスターミナルとなっていて、今もバス停の名称は「鉾田駅」です。

昨年10月22日、鉄道開業150周年を迎えましたが、鉄道の歴史上、廃線となった鉄路も全国各地にあります。鹿島鉄道もその一つで、今なお惜(お)しむ声が多いようです。「鹿島鉄道保存車輛見学と廃線巡りの旅」が昨年行われ、大盛況だったそうです。

「鹿島鉄道を守る会」のホームページ(http://kasitetu.sakura.ne.jp/)には「守る会は存続しています」と記載されていて、今もって更新を続けています。

鉾田駅保存会、鹿島鉄道保存会が共催した「鹿島鉄道廃線15周年展」も昨年夏に開催されました。

鉾田駅保存会が鹿島鉄道線から購入し、鉾田市に寄贈(きぞう)した旧車輛が、温泉施設「ほっとパーク鉾田」(鉾田市当間220)に展示保存されています。

車上ねらいにご注意

ところで、現在、鉾田市内にある冒頭6つの駅前の駐車場はすべて無料です。

その駐車場では、こんな看板でドライバーに注意を促しています。

「車上ねらい注意」

車上ねらい注意

車内の金品を盗まれないよう注意しましょう、との呼びかけです。「車上ねらい」は、「車上荒らし」と言うこともあります。

短い時間でも、車から離れるときは、必ずエンジンを切ってロックし、カバンなども手に持って行ったほうがいいということです。

ここで、一つ質問です。なぜ、車の中のことを言うのに、「車上」なのでしょうか。

それは、自動車が普及する前からある日本語だからです。大八車や荷車の時代です。左右の車輪の間に板があり、その上に荷物を載せて運んでいました。屋根などない状態です。したがって、車の上、つまり車上なのです。

この「車上」という言葉ですが、荷物だけが対象ではありません。

「彼は車上の人となった。」という言い方があります。車内に乗り込んで、これから移動するというときに使います。

先ほどまで私と話していた彼は、今は車上の人となった。

少々、文語的な表現です。旅立つ人を送り出す雰囲気(ふんいき)があります。

車だけではありません。

「船上の人」と言えば乗船した人、「機上の人」と言えば飛行機に搭乗した人、「馬上の人」と言えば乗馬した人、戦(いくさ)に向かう人のことです。

車上の人

船上の人

機上の人

馬上の人

「車上」「船上」「機上」「馬上」などとは意味合いが違いますが、「~上(じょう)」という表現は、日本語教育においては、やや上級レベルの語彙(ごい)です。

先ほど筆者も、「鉄道の歴史上、廃線となった鉄路も全国各地にあります。」と記しました。

「歴史上」とは、歴史という観点からすると、という意味です。

「法律上」「仕事上」「教育上」「経験上」「立場上」「理論上」「宗教上」「道義上」などの表現があります。

「18歳の彼は法律上ではもう大人です。しかし、実際はまだ高校生で……。」というように使います。

18歳の彼は法律上ではもう大人です。しかし、実際はまだ高校生で……。

これらは、「~の上(うえ)では」と言い換えることができる場合もあります。

「18歳の彼は法律の上ではもう大人です。しかし、実際はまだ高校生で……。」

18歳の彼は法律の上ではもう大人です。しかし、実際はまだ高校生で……。

2003年は2月4日が立春です。

そう、暦(こよみ)の上では、もう春ですね。

立春です。暦の上では、もう春ですね。

校庭の椿(つばき)も、今にもほころびそうな蕾(つぼみ)が厳冬に堪(た)えています。中には気の早い一、二輪もありますが、それぞれの開花のときを今や遅しと待っているようです。